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奥井宗夫のむねのおく 26

「よみがえる総天然色の列車たち第2章21

蒸気機関車篇<中篇>」のむねのおく(その1)

―蒸気機関車篇も3つに分けて、材料的にはたっぷりあるんですけれど、中味的なことでは割と紀勢本線、この松阪近辺のものが多かったりして、同じような映像ばかりになるのかなと思ったら、並べてみると案外そうじゃない……。

奥井 だけど抜けてるところがたくさんあります。

―あれで、ですか?

奥井 急行が無いんです。「伊勢」「大和」「紀伊」もそうだけど、それが全く抜けてるんです。

―はいはいはい。

奥井 朝5時に多気まで行けばいい訳やけど、それができなかった。

―多分、時間的に暗いから……。

奥井 そう。行くにしても砂利道やし、暗いし、自転車やと危ないし。それに、朝は僕が忙しいし。

―そうなんですよ。奥井さんの商売的には、行くのにも時間的に無理だと思います。

奥井 それで急行が抜けているし、混合列車が抜けているし……。

―「紀伊」は何が牽いていたんですか。

奥井 DF50。DF50が牽いてきて、C57が待機していてバトンタッチして。最初の頃は4〜5両牽いていたけれど、最後はハフとハネの2両編成で鳥羽まで走った。

―どこからシゴナナに? 亀山からですか。

奥井 いやいや、多気から。

―多気から? 「大和」も亀山までDF50で来て、そこからD51ですか。加太越え。

奥井 加太越えはね、C57がやっていたんじゃないですか。あっちの方でのシゴナナの写真を見たことがあります。

―加太越えでシゴナナを使うんですね。時間的にはだいぶ早い時間だから、ますます夜が明けていないですよね……。

奥井 無理無理。だから全急行が抜けている訳です。

―湊町に朝着くわけですからね。

奥井 そうそうそう。

―夜は夜で、上りの時間が遅いし……。

奥井 そう。

―それは、もうどうしようもないですね。

奥井 フィルムの感度も足らなかったし。

―あとあと、能登線とか日中線の車内も撮られているけれど、フィルムの感度が足りずに……。

奥井 ASA10やもん。

―10ですか!? 10じゃ無理ですね。40でも無理ですもんね。

奥井 よう、ASA10のフィルムで撮っとったもんやな(笑)。

―(笑)なるほどねえ。だから、昼間限定となるわけですね。

奥井 うん。

―でも、亀山機関区で残り少なくなってきた機関車の頃の撮影で、昭和45年〜48年ぐらいになるんですが、シゴナナにしても当時3両ぐらいしか残っていない……。

奥井 そうそう。

―その機関車をピンポイントで狙ったものを、フィルムロールごとにまとめている訳ですね。ですので、作品は基本的にそこはあまり変えずに生かした形の編集にしています。このシリーズも巻数を重ねるうちにだんだん元々の形で作るように悟ってきました。

奥井(笑)

―初めの頃の電気機関車篇や電車篇では形式ごとに分けて奥井さんに怒られ……(笑)。

奥井(笑)

―ここはそのままひと塊でいいのに、と言われながらも、申し訳ないですが形式ごとにまとめるためにそういう形にさせていただいていました。でも今回は、元々形式ごとにまとめられていたので、その面白さは……。

奥井 あったよ!かなり!

―ありましたですねえ!

奥井 まさか、ワフ2両を牽いてやってくるとは、思えへんわ、絶対(笑)!

―そうですよね。僕として認識がなかったのは、シゴナナが貨物を牽引する運用があったということ。

奥井 デゴイチは貨物を牽くし、客車も牽く場合があるけどさ、そこら辺はもう、臨機応変で……。

―はい。

奥井 どんどんどんどん入って来るし。

―だから逆に言えばそのデゴイチが、奈良区のデゴイチですかね、伊勢市駅で入換えをやっているのがありますよね。

奥井 あれはあのまま鳥羽まで貨物を牽いて入ったんです。

―そして構内で入換えをする仕業まであった。

奥井 おもしろいよね。

―シゴナナを追いかけている中で、デゴイチがそういう形で出てくる……。

奥井 割り込んでくる……。

―そのデゴイチにしても、シールドビーム1灯が付いてるとか、それから、デゴイチの499ですか、あの、後藤式の……。

奥井 そうそうそう。あれ、499。

―デフ付けて、なんかお洒落な形をしてて。

奥井 今、津に居てます。

―あっ、なるほどなるほど。

奥井 偕楽公園、あそこに保存してます。あれはなかなか、名機ということになってます。

―当時から人気が……。

奥井 当時からです。

―スタイリッシュですね。やっぱりこうして見てると、蒸気機関車の後期の方にはいろいろ、やっぱり手が加えられて形が変わって……。

奥井 そうそう。うん、面白いですね、見ていて。

―はい。亀山区のやつは、出てくるものに関しては全部、重油併燃のタンクが……。

奥井 付いてます。

―付いてますしね。シゴナナが3両、出てくるんですけれども。110と148と198ですね。

奥井 そこら辺の番号、たくさん居ましたね。140も居たし、145も居たし。シゴナナは結構居たんです。

―はい。

奥井 どんどんどんどん減っていきました。最盛期には伊勢(機関区)に6台か8台居たな。亀山はもっと居たと思いますよ(編集注:亀山区には昭和40年〜42年にC57が最大となる10両配置されていた)。名古屋の罐はそんなに入って来なかったな。けど梅小路のが入ってきました。あらっと思ったのは、C54の6番が後押しで入ってきて、ウワーッ、と思った(笑)!

―シゴヨンが来てきましたか(笑)。本来は山陰線で使ってたやつですよね。

奥井 そうそう、それが山陰線のヤードで休んでる時に何かあったもんで、急遽行けってな調子でこっち来て。あれはよう覚えとるわ。けど、写せなかった。

―梅小路のシゴナナといえば草津線の運用で来てて、たとえば、「姫路快速」もそうだったということですよね。

奥井 そうそう。姫路快速は全部、向こうの罐でした。

―そもそも蒸気機関車篇の前篇ではシゴイチが大活躍で。

奥井 うん。

―シゴイチの入っていた運用の後をそのままシゴナナが継いだんですね。

奥井 そうそう。

―貨物の牽引もその流れで、シゴナナに当然引き継がれたわけですね。

奥井 あれはホントに、バラエティ豊かでした。

           

―シゴナナも198になると、もう4次形で……。

奥井 あれは千葉の方に持って行ったでしょ。保存で。

―はい。

奥井 それで、結局、向うで解体されました。維持しきれんでな。

―私なんかでいうと、あまりね、4次形って見た覚えが無くて、馴染みがなかったんですよね。

奥井 いやって言うぐらい、出てくるでしょ(笑)。

―いわゆる、密閉式のキャブで。

奥井 よかったよ、あの機関車は。見栄えがして。テンダ、欠き取りないし。

―はい。あの、四角のね。

奥井 そう。

―羊羹みたいな(笑)。あれですか、乗務員さんの話とか、聞いたことはあるんですか。

奥井 乗務員はね、シゴイチの時代に聞いたことあるけれども、やっぱり苦労してたんですよ、彼らは。

―はい。

奥井 なんせ、宮川の鉄橋で重連で走ったら、前方の信号機が見えへんだって言うんやもん。ふわふわして消えていく(笑)。

―宮川って言うたら、こんなトラスのね。

奥井 そうそう、あれ。

―径間が長くて補強はしてるんでしょうけれど、なんかいびつな十字になっている……。それで補強しているけどたわんでるんですか。

奥井 たわんでる(笑)。「それでな、奥井さん、前の信号、見えたり見えんだりするねん」「えーっ!」って(笑)。「重連の時だけやけどな」って。

―それは初耳でしたね。

奥井 それと言うていいんか悪いんか知らんけど、下庄にカーブしながらぐーっと下がってぐーっと登っていく坂があるでしょ。あれを、ブレーキ掛けんと走ったことがあるとか。

―はあ。どうなりました?

奥井 確かに片方、浮いたって言うんです(笑)。

―(笑)。蒸気機関車時代の人に聞いたら、たまに浮いたとか側線突っ込んだとか言う話、笑い話として出てきますけど……。

奥井 浮いたって(笑)。

―(笑)、あるんですよね。

奥井 やっぱりみんな、あそこで、田丸辺りで、みんな走り放題で走ったらしい。100キロ出すんですって。

―参宮線の田丸城跡の横ですよね。

奥井 そうそう。近鉄と対抗してるわけだわ(笑)。

―なるほど、向こうは参宮急行時代から飛ばして100キロで走ってるから(笑)。並行して直線で見通しもいい。お互いに見通せる……。

奥井 そういうとこでないと……(笑)。

―あれですよね、特急つばめと阪急京都線が競争したみたいな……。

奥井 そうそう(笑)。やっぱりそういう対向意識があったんで、良かったんと違いますか。そこらへんは。

―ええ。参宮線っていうのは昔から線形もよかったですしね。

奥井 しかも、あの松阪駅というのは、国鉄と近鉄の仲がいいんだもの。

―なるほど。

奥井 お互いにお客さんを待ってて(笑)。

―なるほど。

奥井 すごく仲良くってね。「おい俺とこ5分遅れてる」ってね、向こうから連絡が来るんですよ。駅に居ると。「5分ぐらいやったら待っとるわ」って待って、7分遅れで上って行ったこと、しょっちゅうあるんですわ。

―なるほど。今みたいな会社同士の協議みたいなのあるわけじゃなくて、現場レベルで……。

奥井 そうそう現場レベルで。しかも、近鉄は伝統的に松阪駅に駅長が居ないから。

―あ、そうなんですか。

奥井 うん、駅長不在なん。で、「駅長出せ!」って文句言うてくると、駅長は居りませんねんって(笑)。中川の駅長が兼任やもん。

―なるほど(笑)。

奥井 わざとそうしたんでしょうね(笑)。

―置いておくと、却って色々と……。

奥井 そのほうがええんでしょ。あれ(笑)。

―なるほど。参宮線は、一時国鉄としては見放したようなところがあったじゃないですか。今はまた快速「みえ」が走り出してから……。

奥井 安定してますよ。しかも料金は安く割り引いてるもん。

―結局、特急にせずにわざと快速のままにしているんですね。料金を押さえ、割引切符もあるし、近鉄と充分対抗出来る……。

奥井 そういうことですね。

―今日も鳥羽行って快速「みえ」に乗って来たんですけども、お客さんの数を見てると、結構乗っているんですね。閑散期の昼間でしたから4連じゃなくて2連で走っていましたが。でも、鳥羽で近鉄特急の車内を見ると、乗客の数は快速「みえ」の方が遥かに多いっていう感じだったんです。それなりに乗っているんですね。それとやっぱり、南紀方面から多気で乗り換えして伊勢方面に行かれるお客さんが結構多いんですね。

奥井 あるある。あれは昔から不思議なことでな、だから特急「くろしお」が最初に登場する時、松阪駅には停車せんということになって。その時は、国鉄に堀木鎌三さんという人が居て、この人が上手いこと松阪に停めてくれたんですわ。30秒停車で(笑)。

―あれでしょう。確か、松阪駅を通過させないことには表定速度が60キロを切るとか……。

奥井 49(笑)。

―50キロ切って49になる!? 50キロ切るんですか(笑)。さすがに当時でも体面としてはあれで、まあ何とか30秒停車で何とかして、それで50キロを切らないようにしたという……。

奥井 そうなんよ。それで松阪に停めてみて、どれだけお客さんが乗るか見たら、松阪が一番多かったんです(笑)。それで松阪にマルス101を先に持ってきたんや、津より先に。

―ほおー!

奥井 今は津の方が遥かに多いけれどね(笑)。

―なるほど、当時は津よりも松阪の方が……。

奥井 ところが、それは東京では解らんわけですよ。

―ですよね。遠い本社ではね。

―前に仰ってましたけれど、いわゆる松阪っていうのは、名古屋と大阪の文化が混ざって……。

奥井 そうなんです。同時に天王寺管理局の松阪支局があったので、それで大きいですわな。

―はい。

奥井 しかもここで記念乗車券を第1号を作ったんですよ。

―はあ。何の時のですか?

奥井 天王寺管理局何とかの記念乗車券という名前のものを作ってね。内部関係で配っているんです。

―はい。

奥井 それは結局、戦後の記念乗車券の第1号になっています。

―戦後の第1号!

奥井 うん、戦後の第1号。

ーはあー!

奥井 昭和25年前後やったと思います。それで、僕が東京へ行くとね、マニアの人たちが、記念乗車券が出るかもしれないと思って、ものすごく接待してくれてね。飲めや歌えやの大騒ぎして(笑)。「一体何でこんなに接待してくれるんかいな」って。「それは奥井さん、あいつあれを狙ろとんねんや。万一出たらあいつにやったって」(笑)。

―なるほど(笑)。いや、でも、そんな時代から飲めや歌えやするぐらい、切符が欲しい人がいたわけですか。

奥井 うん、そうそうそう。

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