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奥井宗夫のむねのおく 2-15

「よみがえる総天然色の列車たち第2章15近鉄篇3」のむねのおく(その1)

奥井宗夫(おくいむねお)氏 略歴

三重県松阪市在住。昭和11(1936)年生まれ。1959(昭和34)年に23歳で8ミリカメラを手にして以来、鉄道車両を追って日本各地を行脚。青果業を営むかたわら、四半世紀以上にわたって撮影したカラーフィルムは約280本にもおよぶ。松阪レールクラブ会員。

―続いて「近鉄篇3」です。この巻では2200系を中心に取り上げています。まず、青山峠からお伺いしますが、昭和47年の夏の早い時期、まだ伊勢中川駅構内が単線で、徐々に複線化が進んでいる頃に撮影されています。

奥井 いずれ、無くなるもんだから、一生懸命撮っていたんです。やっぱり、気になっていましたしね、行きやすいもんね。午前中仕事をしておいて、昼からちょっと行けたんですから(笑)。

―(複線化工事の)出来上がる前と後の違いがよく解る、丁度、工事中の頃の映像ですね。

奥井 今でも行ってみると、(複線化工事の様子が)みんな解ると思いますね。

―あの区間(名張―伊勢中川)といえば、線路の付替えもあれば1線腹付けして複線にした所もあり、一時的にこちら(複線化用のトンネル)を開通させて付け替えたりもしていて……。

奥井 (複線化工事で完成した区間を)上手に使うとるよね。近鉄さんも。

―ここという所はちゃんと押さえておられるでしょ。

奥井 ハイライトの部分は押さえておるつもりです。

―非常に解りやすい、資料性としての価値も高い映像です。

奥井 山を越えるのも平気なんやけど、時間がもったいないので越えないだけで、適当にうまいこと撮って帰ってくる(笑)。

―旧線のところで言うと、大きな事故があって、元々(複線化の)計画があったんですけど……。

奥井 急遽早くなったんだよね。

―これまでイメージでしか掴んではいなかったのですが、その場所を奥井さんの映像で初めて見ました。

奥井 僕も花を活けてあるのは、ちょっと覚えていなかった。

―事故の場所は廃線になっていて、わからなくなっているところですから。

奥井 そうそう。

―東青山駅などの映像を見て思っていたのですが、この時代には上下列車が交換できるところには脱線ポイントがあって、それが開いた先は線路が急に上がっているんですね。

奥井 確かに急勾配区間の、肝心なところですから。

―特殊ですよね。昔は阪急なんかでも脱線ポイントはありましたが、それが開いていたらそこで(電車が)脱線して平坦な所で止まるようになっていました。しかし、ここの脱線ポイントには勾配がつけてあって、そこで電車を止めるようにしてあった。さすが山岳区間の脱線ポイントだな、と実感しました。

奥井 よくわかりますね。

―単線になったり複線になったりしている所を、順番に奥井さんは撮っておられていて、先ほど山を越えるのはいややと言ってましたが、結構山を越えて歩いておられます。山歩きのご趣味が活かされているようで。

奥井 ホントに活きています(笑)。山歩きの趣味をやめざるをえなかったのは1、2日の休みが取れなかったからです。安全のことを思ったら、早い目に山を下りるなり休むなりしなきゃいけない。

―青山峠の最初のフィルムは秋ですよね。

奥井 あー、青山峠には単車で行ってるわ!

―単車でですか!? そう言えば、駅から遠い場所の映像が結構ありますからね。

奥井 125ccの単車で行ってるわ。タイヤがね、半分埋まるんですわ、泥で。で、もうちょっと上に行くと、今度は道の真ん中に雪が積もっていて、両側が凍っているんだわ。そんな時にも行ってる(笑)。

―じゃ、二つめの冬のフィルムがその時ですか。

奥井 それやそれや! その時は雪が凄かった! 「お前、こんなとこ走るんか」って工事の人に言われて、「撮影のために走りたいんです」って言うたら、「真ん中を走って行けよ」って(笑)。

―冬の映像は2本あって、編集で1本にまとめているんですが。

奥井 この時はあんまり撮らなかった。(単車で)走るのが精いっぱいで(笑)。

―撮られなかったんですね(笑)。結局、秋に1回行って……。

奥井 冬に2回、行ってます。

―列車でアプローチして東青山へ着くのはいいですが、そこからはどこへも行けないですからね。あれは、偶然雪の日だったんですか。

奥井 積もった時に行きたいんや、ということで、しょっちゅう駅に電話で積雪状況を聞いて、雪が積もっていたらすぐに飛んで行く(笑)。

―撮影の日は相当な積雪量でしたね。

奥井 記録上2番目(の積雪量)って駅員が言うてたから。

―史上2番目ですか。逆に運休せずに、よく走っていましたね。

奥井 そのために職員を、東西両青山駅にどんどんかき集めていたんだわ。

―結局そうですか。東青山の映像では竿で信号機の雪を落としていましたが。

奥井 そういう人を、駅長か誰かの指示でみんな集めていたんですわ。保線区の人が別にいて、二人一組になって、ポイントをカンテラで温めたり。やっぱり危険であることを常時考えていますよね。職員を集めてきて二人ずつ組ませて。駅の業務だけでも大変やったと思うけれど。

―お客さんが少なくて駅員ばっかりに見えるのは、そういう日であったからなんですね。

奥井 駅員はうまいことやるけれど、周りが逆に大変やったと思う。慣れん人を入れて。けれど、そこを上手にこなしていたね、近鉄は。

―実際、東青山駅のお客さんはというと……。

奥井 いないと思う。第一、下から上がって来ない。

―「近鉄プロファイル」の撮影に一昨年(平成23年)、車で行ける所まで行ってそのあと歩いてカメラと三脚を担いで行ったんですけれど、とてもじゃないですが車で行けるような勾配ではありませんでした。そして、登り切ったところに広場があって、ホームが2本残っているような所で。

奥井 またあそこまで、単車で行きたいね。

―線路がなくなってからは行かれたことはないんでしょ。

奥井 ないね。

―それは是非行っておかないと!(笑)

奥井 (笑)。近鉄の「あみま倶楽部」のハイキングコースで、一回上から下りたことはあるんよ。また、行かなあかん。

―確か秋の映像では、(東青山駅に)思ったよりお客さんがいらして、たぶんこれはハイカーだろうなと思うのですが。

奥井 そうそうそう。

―まあ、あれだけの秘境駅はなかなかなかったでしょうね。

奥井 うーん、なかったでしょうねぇ。

―逆に(秘境駅ブームの)今だったら大勢の人が訪れていて、特急が臨時停車していたりすると興ざめだなぁ、と思ってしまいますが(笑)。

奥井 今は、昔ほど秘境じゃないから(笑)。もうちょっと青山の駅の上に、何ぞあるといいんだろうけどね。遊ぶところとか。

―そういう意味では、現在の東青山駅の所に公園を造りましたけどね。調べてみますと、現在の西青山駅でも結局山を越えないと民家がない。そんな場所に何故駅を作ったかを、作品中でも簡単に説明していますが。でも、そんな駅なのに本線にあるためにあれだけ引っ切り無しに電車が通っている……。

奥井 素晴らしい駅でしたねぇ。

―そのギャップが凄いですね。駅の横に岩肌を掘った水路トンネルがあって、素晴らしい滝が落ちていますね。

奥井 ああいう駅なんです。ああして水を抜かんとアカンかったんちゃうかな。

―推測なんですが、元々は線路と並行方向に川が流れていたんではないでしょうか。直角に交わっていれば鉄橋も架けられたんでしょうが、並行なのでそのままでは線路が敷けず、場所も狭いので、トンネルを掘って水路を引き直したんでしょうね。

奥井 そういうこっちゃろな。

―でないと、そんな所にトンネルなんか掘りませんからね。ということは、もともと駅のそばに立派な滝があったんだろうな、と。

奥井 そういう気がします。

―今やったら、建設の許可が下りないような気がします。もう一つ上にもあるようですが、滝をつぶすなんてやることが凄いですよね、当時は。

奥井 そうですよね。

―秋のシーズンで、稲刈りした後のわらを積んである映像がありまして、大阪出身の私にはあまり見慣れない形の積み方でしたので、面白いなと思ったのですが。

奥井 この辺も直に廃墟になるだろうな、と思って撮ったんだけどね。

―それはどういう意味で。

奥井 昔、単車で上って行ったことがあって、その時は結構(耕作していた)場所だったんだけど。あんな不便なところなので、これは、行く行くは耕作放棄をするだろうな、と思って撮ったの。

―それは、農作物について日々係わられている奥井さんならではの目線といいますか……。

奥井 おそらく今は荒れた土地になっているやろうと思うよ。

―その前後のカットで小さな看板があって、「東青山駅←」と書いてあるような気がするんですけど。

奥井 そうです。

―分かれ道ですよね。あそこから、数キロメートル歩かないといけないんでしょうね。まあ、廃止になったローカル線ではなく、これだけの長距離を付け替えた近鉄大阪線という大幹線の、付け替え前はこんな風な所でしたという映像で、興味は尽きません。

奥井 そう言えばそうですね。どっちに行くのも不便なところでね。

―東青山駅のホームを、高所から撮っておられましたね。

奥井 やっぱり撮っておかなきゃ。

―なくなる年(昭和50年)の冬も撮りに行かれて。

奥井 もう、今しかないと思って。今でしょ!(笑)

(つづく)

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